HOME>作品紹介>ハンナのかばん

眠っているウサギ

上演時間=1時間30分(休憩なし)

「はみ出したらダメ」
「お金がすべて」

そんな社会に生まれた子がホームレスを襲ったら、誰の責任?

あらすじ

ホームレスを襲う事件が続く。犯人は高校生の二人組だという噂が広がる――
高校二年の真島裕司は、成績が悪く、家でも学校でも居場所を失い、学習塾「まきの」が唯一の居場所になっていた。裕司は、「まきの」で、成績優秀、スポーツもできて目立つ存在である高校二年の西田進と知り合い、行動をともにするようになっていく。高校一年の真島淳子は、兄の裕司から「『眠っているウサギ』を知っているか。面白いんだぞ」と聞かされ、西田とともに裕司がホームレスを襲っているのではないかと心 配になる……。

イソップ物語のウサギは本当に怠けて昼寝していたのだろうか。やむを得ない事情があっ て横になっていたのかもしれない。本当のところはわからない。真実は何なのか?

スタッフ

  • 作/くるみざわしん
  • 演出/高橋正徳
  • 美術/乘峯雅寛
  • 照明/森和雄
  • 音響/原島正治(囃組)
  • 衣裳/大野典子
  • 演出助手/北村侑也
  • 舞台監督/小林敬子
  • 音響オペレーター/河合宣彦
  • 宣伝美術/高橋善丸
  • 制作/澳利子

出演者

  • 西田進(17歳・高校2年生)
  • 真島淳子(16歳・高校1年生)
  • 真島裕司(17歳・高校2年生 淳子の兄)
  • 篠原美香(17歳・高校2年生)
  • 町村吾郎(37歳・ホームレス)
  • 大石保(65歳・ホームレス)
  • 水本ゆう子(64歳・元教師)
  • 牧野和夫(56歳・塾講師 篠原美香の父)
※2019年12月21日初演

舞台写真


「眠っているウサギ」作者・演出者の言葉

気づきの教材として

くるみざわしん

2012年秋、JR大阪駅の高架下で寝ていた富松国春さん(当時67歳)を少年4人が暴行 し、死なせました。病気や失業など様々な事情があって路上で暮らすようになった一人一 人に名前があり、命がある。それを「ホームレス」という言葉でひとくくりにして襲う。 その事実に衝撃を受け、事件後に開かれたシンポジウムに参加し、次の襲撃が起きないための力になりたいと思い、書き上げたのが本作「眠っているウサギ」です。
長年、ホームレス支援を続けている「野宿者支援ネットワーク」の代表の生田武志さんによると、野宿者への理解を広める授業のなかである生徒が「居場所がなくて本当にホームレスだったのは襲った少年達の方だったと思う」と感想を言ったそうです。 「眠っているウサギ」には競争、格差、貧困など子ども達に関わる問題をできる限り具体的に盛り込みました。子ども達が大人と一緒に考え、気づきの教材として生かしていただけるとありがたいです。

プロフィール

くるみざわ・しん

劇作家。「北区つかこうへい劇団戯曲作法塾」「伊丹想流私塾」を経て、劇団「光の領地 」を旗揚げ、関西を中心に上演活動を行う。2015年『ひなの砦』で第22回OMS戯曲賞佳 作。2017年『精神病院つばき荘』が日本劇作家協会新人戯曲賞最終候補。『同郷同年』が 2016年「日本の劇」戯曲賞、2018年OMS戯曲賞大賞を受賞。詩人としても作品を発表し 、伊藤静雄賞佳作等を受賞。

新しい日常で

高橋 正徳(たかはし・まさのり)

2020年4月現在、世界中を覆うコロナ禍で、我々人類が築き上げてきた活動がある所ではスローダウンし、ある所では完全にストップしています。大都市の繁華街では人出は減 っているものの、地元住人に根付いた商店街はそれ程人出が減っているとは言えない現状があります。「不要不急」の外出は控えるようにというお達しは頭では分かっているものの、外に出て誰かと話したい、交流したいという事が改めて人間の生まれ持った欲望なのだと痛感しています。
「眠っているウサギ」は、2012年に大阪で起きた少年達によるホームレス襲撃事件をモチーフにした物語です。ホームレスを襲撃した少年と襲撃出来なかった少年の二人を取り巻く人間関係の中で、家族や学校、親子や友人関係などのコミュニティーがどう機能するか。既存のコミュニティーを見直すと同時に、新しい可能性に光を当てた作品になっていると思います。
今現在のコロナ禍が過ぎ去り、訪れる日常は、それまでの私たちを取り巻いた日常とは違った世界になるかもしれません。だからこそ、劇場で、学校でこの作品が改めて上演出来る時には、私たちが生きる新しい世界で、ちょっとした道しるべになっていればと願っています。

プロフィール

高橋正徳(たかはし・まさのり)

2000年文学座附属演劇研究所入所。05年座員昇格。木村光一氏、西川信廣氏、鵜山仁氏、の演出助手として研鑽を積む。
04年文学座アトリエの会「TERRA NOVA テラ ノヴァ」で初演出。以降、鐘下辰男、佃典彦、東憲司、青木豪、古川健、秋之桜子など現代日本人作家の新作を多数演出。また翻訳戯曲の演出も積極的に行う。2011年文化庁新進芸術家海外研修制度により1年間イタリア・ローマに留学。
*主な演出作品
「越前竹人形」「白鯨」「ガラスの動物園」以上文学座。「The Dark」(オフィス・コットーネ)、「毒女」(椿組)、「斜光」(水戸芸術館)「The Story of My Life」(ホリプロ)など。